求肥って美味しいですよね!
求肥は白玉粉かもち粉に砂糖や水飴を加えて練ったもので、もちもちの食感と優しい甘さの和菓子です。
あんみつなどに緑やピンク色をした固めの求肥がちょこん、とのっていますね。
花びら餅にも欠かせませんし、春先ではいちご大福の皮としても使われもします。
でも、どれも求肥はあくまでも包み込むもの、メインに添えるサブ的な位置づけではないでしょうか。
そこで 若あゆ です。
そもそも若あゆとは?
求肥をカステラ生地で包んだ和菓子で、カステラ生地に焼き印で魚(鮎 = あゆ)のように見える焼きごてが押してあります。
関東と関西では求肥以外のものを入れるか、入れないか、少々地域差があるようですが、筆者は求肥好きなので、関西(京都)寄りのカステラ生地の中は求肥のみ、の潔い方が好きです。むしろそういうタイプしか食べません。
お店にもよりますが、若あゆのなかの求肥は溶けそうなほどとても柔らかく、しっとりとして、光にあてるとみずみずしいかのようにキラキラとひかり、上品な甘さで、さくっとした歯ざわりながら、ねちっとした食感。
冒頭にあげた和菓子と大きな違いはなんといっても「厚み」ではないでしょうか。
厚みのある求肥はそれだけで美しく、完成度の高い和菓子です。
そんな求肥を優しく包むのがカステラ生地。
ここは各メーカーによって差を感じます。厚いもの、薄いもの。大きいもの、小さいもの。甘みの強いもの、さっぱり味なもの。しっとりなもの、さっくり系なもの。黒砂糖などを使いコクの強いもの、求肥の甘さを引き立てるわき役的なもの
こればかりは食べてみないとわからない点ですね。
「若あゆ」の名前の通り、鮎が解禁される次期の少し前から発売が開始されます。
まさに今は 6 月。
ちょうど和菓子 若あゆのシーズンです。
アジサイを見ると若あゆの季節ですね。
しかし、一定数のファンがいる和菓子のせいなのか、最近ではゴールデンウィークの前後くらいから主に観光地や空港では発売されていることもありますし、筆者は秋口にみかけたことがあります。
また、「若あゆ」の名前で発売 = 「あゆ」の見た目で発売されるのが初夏の時期だけであって、他の時期には別の名前、別の焼きごてで販売されていることもままあります。
「若あゆ」が冬場になると「調布」(ちょうふ)の名前で発売される店もあり、探せばわりと年中手に入ります。
若あゆの選びかたのポイント
前述したとおり、若あゆ自体は求肥とカステラの和菓子です。
では、なにを購入しても同じか、というともちろんそんなことはありません。
若あゆのデザイン
カステラ生地に焼きごてで模様をつけて、若あゆ = 魚 のビジュアルとなるのが基本ラインです。
「目」「エラ」「胸びれ」はだいたい、との若鮎にも焼きごてで表現されています。
尾びれは焼きごてだけで表現するものが多いでですが、カステラ生地をひねってくびれをつけたり、折り目をつけて尾びれのビラビラ感をだしたりするものもあります。
若あゆのリアルさ(?)にこだわりがあるメーカーですと、背びれや側線が表現されているものもあります。
これに加えて、カステラ生地を薄めにしてすっきりとしたものや、厚めにやいてふっくらとしたもの、に分かれます。
あゆのデザインはかわいらしいキュートなものから、シンプルなものまで、千差万別です。
カステラ生地の厚さ薄さ以外は、和菓子としての味を左右するものではないので、好みのビジュアルで選んで構いません。
和菓子として
和菓子として若あゆをとらえると、カステラと求肥というシンプルな構成ゆえに、素材と作りの丁寧さが如実に製品の差として現れます。
カステラの部分であれば、小麦粉、鶏卵、砂糖(ハチミツ)です。
地方の和菓子店などで見かける若あゆでは、地方特産の鶏卵や砂糖を使用しているものがありますね。
カステラとして発売されている商品と違い、若あゆは求肥をまくのでフワフワとした出来上がりではなく、しっとりとしてもちっとした弾力があるものが多いです。
また、厚くてもどら焼きの皮くらいの1センチ程度になります。
求肥の部分であれば、もち粉、砂糖です。
求肥に関していえば、材料というよりも仕上がりの食感に違いと店のこだわりが現れるように思います。
さくっと歯で噛みきれるものか、ねちっと歯で押しつぶして食べるものか、砂糖が多くてざらりとした舌触りなのか、舌の上で柔らかく溶けるものなのか、もちの要素が強くて弾力の強い食感か、粘りが強くて歯にくっつくようなものなのか。
こればかりは食べてみないことにはわからない点です。
特に若あゆの求肥はカステラ生地に隠れているので、いくつも食べて筆者でも、食べる前の見た目から求肥の具合まで判断することは非常に難しいです。
まかれているカステラ生地の大きさ、若あゆの腹部分のふくらみから求肥は判断するしかないですね。
そこがまた、新たな若あゆとの出会いを欲する気持ちを駆りたてます。
若あゆおすすめ 4 選
砂糖や水あめで保水力を増しているとはいえ、求肥はそもそも、美味しく食べるにはあまり日持ちのしない和菓子です。
そのため、基本的には各店舗で販売されているものを購入するしかない、というお店も多くあります。
筆者が大好きなベスト若あゆは残念ながら賞味期限が 2 – 3 日のため通販対応しておらず、新幹線で 3 時間ほどかかるために旅行を兼ねないと食べられません。
しかし、いくつかの店舗では通販対応をしており、いつでも自宅でカステラと求肥のハーモニーを楽しむことができます!
ここでは、通販で購入できる若あゆを紹介します。
紅梅屋 若あゆ
珍しい生姜風味の生地を使用した若あゆです。生姜が効いているせいなのか、小ぶりで上品ないでたちの若あゆに仕上がっています。
カステラ生地をひねって尾びれに見立てられ、その分清流を泳いでいるような躍動感があり、まさに初夏の和菓子。
甘みと生姜の辛みがあるため、冷たく冷やした緑茶とともに食べるのも良いかと思います。
前知識なしに食すると、生姜の風味は小さなお子さまはびっくりされるかも。大人向けの若あゆになります。
京みずは 若あゆ
こちらはカステラ生地のふんわりとした若あゆ。
どら焼きの皮のように中央が厚く、フチの部分が薄い皮で包まれています。
個人の好みの差かと思いますが、カステラ生地の厚みが不均一だと、食べる場所(若あゆでいうと、背の部分と腹の部分)で食感がかなり違うので、評価が分かれるかもしれません。
中身の求肥はかなりふわふわ~もちもち~な食感。大福などのあの柔らかい感じを好まれる方なら、このもちっと感はたまらないのではないでしょうか。
生地よりも求肥の美味しさが目立つ若あゆだと思います。
大きさは横に 13 ~ 14 センチとそこそこ大きめで、箱詰めに 4 匹(4個?)も入っていると思ったよりもボリュームのある手土産になります。
いと重菓舗 若あゆ
いと重菓舗は彦根の老舗和菓子店です。この地方に旅された方のお土産として「埋れ木」をいただいた方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらは薄めのカステラ生地におおぶりなもっちり系の求肥をくるんだ若あゆ。
筆者はこちらの和菓子は「埋れ木」はいただいたことがありますが、若あゆはありません。
しかし、手にとっただけてくずれる柔らかさ、しっとりとした舌触り、優しい甘さは、求肥そのものの味が美味しさの決め手となる若あゆとなっても充分美味しいのではないでしょうか。
志保重 若あゆ
出典: Amazon.co.jp
福井県の和洋菓子店 志保重(しほじゅう)の若あゆです。個人的なイメージかもしれませんが、東京住まいから見ると福井県およびその周辺(北陸地方)は独自の菓子文化を形成しているように見えます。
街の小さな洋菓子店、といった様相の店舗で、若あゆのビジュアルも実に朴訥に仕上がっています。
皮は薄くてよく焼いているのか焼き色が濃く、しっとりとはまた違う印象です。求肥はどっしりとして食べごたえがありそうです。
1 ついただくとそこそこおなかにたまるサイズかと思われますし、上品にいただくというよりも午後のおやつとして家族でわいわいと楽しく食べる和菓子ですね。
季節を変えて
前述の通り、若あゆは同じ構成で焼きごてを変え、別の名前でもほかの季節に販売されていることがままあります。
ここでは、別の名前ながら同じ構成の和菓子をご紹介します。
廣榮堂武田 調布
出典: Amazon.co.jp
岡山銘菓のきびだんごを製造販売している廣榮堂武田の 調布(ちょうふ)です。
こちらは通年で調布を販売しており、若あゆとしては販売されていないもようです。
生地は薄くて、カステラというよりは厚いクレープ生地に近いかもしれません。また、中身の求肥は大きめで真四角に近く、奥ゆかしく味わうというよりも、食べる、という感覚に近いかも。
真四角の求肥だと若あゆは表現しづらいから、年中調布なのかもしれませんね。
あっさりした甘みで食べやすいお味です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。和菓子 若あゆ。
初夏からの季節限定の和菓子とあって、まだまだマイナーな和菓子だと思いますが、素朴ながら優しい甘さともちもちの食感は日本人なら誰しもが好む味わいだはないかと思います。
フルーツや野菜などの食べ物に旬があるように、和菓子にも目で味わうための旬があります。
若あゆはまさに 6 月からの初夏を堪能し、清流を泳ぐ魚の姿に涼を求める日本ならではの和菓子です。
この季節に、一度お試しになられてはいかがでしょうか。