スチームパンクをすでに知っている、把握している人の数だけ、スチームパンクとの出会いがある気がしますが、筆者はある雑誌に掲載されていたコラムだったと記憶しています。
あまりに昔なので判然としませんが、たしか早川書房から刊行されている雑誌「S-Fマガジン」に掲載された、日本か、英米でのスチームパンクの流行について触れ、考察、現在のスチームパンクのメインストリームについてのコラムだったと記憶しています。
この雑誌は当時は月刊誌でしたが、現在は 2 ヵ月ごとの発刊という隔月雑誌となっています。
スチームパンクはカテゴリ「サイエンス・フィクション」のなかのさらに 1 カテゴリ、1 サブジャンルが本来の単語解説になるかと思いますが、今はスチームパンクの語のなかには、ファッション、アートも含んでいます。
現在では、小説や映画、コミックだけではなく、アクセサリーから、絵から、雰囲気から、さまざまな角度から、スチームパンクとの出会いは用意されています。
目次
見れば虜になる!スチームパンクの魅力
では、スチームパンクとはなにでしょうか。
科学的な空想を物語るサイエンス・フィクションの 1 サブ・ジャンルですが、科学的な空想が過去のある時点を起点とされることが多いです。
多くは産業革命以後の、イギリスの絶頂期となるヴィクトリア朝(1837年 ~ 1901年)やその後のエドワード朝(1901年 ~ 1910年)の雰囲気を持ち、科学的な空想として動力源に蒸気機関、動力伝達として歯車や用いられることがあります。
科学的な空想でいえば筆者がみたことがあるものでは、当時の技術力ではなしえなかった規模の巨大な飛行船、タイプライターや歯車などで作られているアナログながらも信じられないほどの速さで計算するコンピューターなどです。
日本でしたら明治時代から大正時代にかけての産業革命期や大正ロマン、モボモガ、大正デモクラシーといった雰囲気に、当時の本当の技術力以上の科学が成り立っていた、というイメージでしょうか。
産業革命期は各国にありますので、アメリカだとまた異なる雰囲気のスチームパンクの世界観があります。
共通していえる雰囲気は「レトロ・フューチャー」です。むかしにみた、あったかもしれない未来、そのような表現がスチームパンクには似合うかもしれません。
つまり、ざっくりと説明すると、スチームパンクとはヴィクトリア朝や明治大正の産業革命の時期をベースに、科学的空想で肉付けしてできた「世界感」こそがスチームパンクです。
このような構造をもつため、スチームパンクは(高度な科学があったと仮定する)「歴史改変モノ」にも分類されます。
いまではスチームパンクの概念は広がり、ヴィクトリア朝時代のファッションや小道具をモチーフとした現代的なファッション、アート、インテリアなどにもスチームパンクの用語が使用されています。
残念ながら、スチームパンクはフィクションのジャンルとしてはかなりニッチな、正直にいってしまえばマニアックかと思いますので、今では服飾小物やオブジェ、アートとともに語られることが多いように筆者は感じています。
逆にいえば、ビジュアルの訴求力が非常に高いジャンルともいえます。
1つのアイテムでもスチームパンクを感じ取ることができるので、服飾小物としてはとりいれやすいと思います。
絵を描く方向けの本ですが、この本のビジュアルをなか見で確認できます。
スチームパンク世界の描き方
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スチームパンク小説・コミックのおすすめランキング
フィクションとしてのスチームパンクはもとよりニッチなジャンルですが、1 ジャンルとして定着はしていますが、日本では 2000年代、2010年前後にイギリス、アメリカ周辺で流行していました。
前述の通り、スチームパンクは世界の構築ですので、ストーリーはアクション、冒険活劇、ミステリー、恋愛と多岐にわたります。
ゆえに、目新しさを求めてなのか、サイクルがまわったのか、ここ数年であらたにスチームパンクにスポットライトがあてられつつある波も感じます。
第3位 ペルディード・ストリート・ステーション
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イギリスのファンタジー作家、チャイナ・ミエヴィルによる 2001 年アーサー・C・クラーク賞、英国幻想文学大賞を受賞した小説作品。
蒸気機関と魔術が両立し、かつ、人外の生き物も人間と生活をともにする世界観になり、主人公は統一場理論を研究する異端の科学者と、全体を通じて暗い雰囲気です。
チャイナ・ミエヴィルは読み込むのが大変な作品もありますが、これはまだ読みやすい方だと思います。文庫上下 2 冊で 1000 ページとボリュームがあるので、どっぷり世界観につかりたい方におすすめ。
第2位 モンストレス
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コミックですが、アメリカのコミックになります。以下、アメコミと略します。日本のコミックと比べると、左右の開きが違うこと、フルカラー、セリフが横書きがパッと見で感じる違いでしょうか。
主人公は 10 代のハーフエルフの少女、マイカです。とにかくまつげが美しい美少女です。作画を日本人のサナ・タケダ氏が担当しているせいか、絵柄のクドさも少なく、とっつきやすいかと思います。
世界感はSFというよりもファンタジーです。ファンタジーの世界にアール・デコとスチームパンクを盛り込んだ、かなりデコラティブなビジュアルをもつ世界です。
かなり世界が練りこまれており、1 コマ 1 コマをじっくりも見て楽しめます。休日にゆったりと麗しい世界に浸りたい方におすすめ。
ただし、物語かなりダークです。現在刊行中。
第1位 ディファレンス・エンジン
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ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングの 2 人の人気作家による小説です。
ギブスンはスチームパンクではなくサイバーパンクというSFのサブジャンルの立役者ですね。YMO の 楽曲 Floating Away の詞朗読者でもあります。ブルース・スターリングもサイバーパンク作家ではあるのですが、合作したらスチームパンクの傑作ができました。
舞台は 1855年、まさにヴィクトリア朝自体のイギリス、ロンドン。蒸気機関技術が異様に発達した世界での物語です。ザ・スチームパンクの世界観ですね。
複数主人公による物語構築となりゆえ、登場人物が多くてややこしいです。何度も読み返すことになるかと思いますが、スチームパンクと言われたらコレ!といわれる作品です。文庫上下2冊で 900 ページ以下です。
番外編
スチームパンクという語が最初に使われたのはわりとわかっていまして、Wikipedia などにも詳細が記載されています。
SF作家の K・W・ジーター がスチームパンクと呼んだ作品群のなかにティム・パワーズの「アヌビスの門」という 1983 年の小説があります。ティム・パワーズは映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の原作となった「幻影の航海」の作者です。(現在は改題され「生命の泉」の名前で刊行されています)
ティム・パワーズが 1989 年に発表、日本では 1993 年に発売された小説「石の夢」がマイベスト スチームパンク小説です。
現在絶版、古書店でもほぼ見かけませんし、当然のように電子化されていません。しかし、もしここで紹介するスチームパンクに触れて興味をもたれましたら、おすすめしたい 1 冊です。(上下 2 冊組です)
スチームパンクアニメ・映画のおすすめランキング
ランキング形式におすすめの作品をご紹介していきたいと思います。
順位関係なくどれも筆者が愛してやまない作品です。ぜひ参考にしてみてください。
第3位 スチームボーイ
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日本のアニメ映画で、監督は大友克洋氏になります。公開は 2008 年で、筆者は映画館で観ましたが、当時「(ブームが過ぎてしまったので公開が)10年遅かった」と言われたほどこだわって作られた作品になります。
19 世紀半ばのイギリスを舞台にした、少年レイを主人公とした冒険活劇です。
前述の小説・コミックランキングでの作品と違い、気楽に見ていられるので、ポップコーンムービーとしておすすめです。
第2位 リーグ・オブ・レジェンド
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日本では商業的に成功した、と評価されていませんが、スチームパンク的には万々歳の作品。公開年 2003 年とまさに流行っていた時期です。
主人公はショーン・コネリー演じるネモ船長。その他著名な人物がおおく登場しますが、オリジナルとなった人物像をほぼ踏襲していない、ついでにアラン・ムーア原作の物語も踏襲していないので、別物のアクション映画として観たほうが楽しめると思います。
登場人物の背後に映るインテリアや、搭乗する乗り物(車や戦艦)のデザインが逐一カッコイイの一言です。
スチームパンクの世界観をデザインなどで視覚的に味わいたい方におすすめです。
第1位 ワイルド・ワイルド・ウエスト
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西部劇の世界にスチームパンクをあわせた作品です。1999 年のハリウッド映画なので今見ると色々と古いですが、スチームパンク的小道具は細やかなものからおおざっぱなものまで、百花繚乱です。
笑いを撮るようなシーンもあるアクション娯楽大作でして、テイストとしては映画「M.I.B」に似ています。ウィル・スミス主演ですしね。
敵役の人物が乗る車いすが最高にイカしています。ツボにハマる方はおおいにどっぷりハマる映画だと思います。
こちらもスチームパンクのデザインを視覚的に味わいたい方、とくに男子におすすめです。
作品だけじゃない!スチームパンク関連アイテムのおすすめ(アクセサリー、服など)
スチームパンクは世界観なので、映画でもコミックでも、小物がとても大事です。雰囲気をだすことが重要なのです。
そのため、服飾小物は数多く、現在ではフィクションとしてではなくファッションとして手に取りやすくなっています。
ゴーグル
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もうこれさえあればいいんじゃないかな、とまで言われるスチームパンク必須アイテムです。
白い端正なシャツに女性なら黒いロングスカート、男性なら黒いロングパンツ。それにハードブーツを履いて、首からゴーグルをさげればだいたいスチームパンクっぽくなります。
インテリア
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蒸気機関をイメージの元としているせいか、頑丈、武骨な外装がスチームパンクインテリアにはよくみられます。男性の方の部屋、DIYが好きな方が好みそうなデザインが豊富にあります。
時計
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そもそも歯車がかかせないことから掛け時計だけではなく腕時計でもスチームパンクの世界をイメージした商品はたくさんあります。
掛け時計は大きな歯車を用いやすいことから、部屋において映えるアイテムです。
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腕時計はとにかくゴツくなる傾向があります。筆者の友人が 1 つもっていたのですが、高さがかなりあるのでよくぶつけていました。使用にはちょっと注意が必要かもしれません。男性向けですね。
服飾小物
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服飾小物に関してはヴィクトリア朝をベースとした商品が多いです。たくさんあるのですが、手に取りやすい価格で雰囲気があるものだと女性ならブレスレットがあります。
レースと歯車の組み合わせですね。時代的なこともあり、よくゴスロリと一緒にされますが、スチームパンクにロリータは関係ありません。
ファッションやインテリアからもスチームパンクの世界観を感じてみよう
スチームパンクの世界はいかかでしたでしょうか。
日本では流行したのが少々前なのでフィクションに関しては昔の作品が主になってしまいましたが、現在もそのテイスト、世界観は生み出されています。
日常に取り入れやすいファッションやインテリアが多い、珍しいSFのサブジャンルなので、映画や小説を楽しみつつ、さりげなくアクセサリーやインテリアにとりいれて楽しみたいですね。